同世代による熾烈な代表争いと、貫禄の王者 -第52回NHK杯

もう1週間たってしまいしたが、NHK杯の観戦レポートを。

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第52回NHK杯情報 | 日本体操協会公式ブログ | スポーツナビ+.

オリンピック直後のフィーバーは一段落しましたが、まだまだ内村の注目度は高いようで、周囲の親子連れが、「ほら、あの人が金メダルの人だよ」と教えていたりしました。

今回のNHK杯は、全日本選手権の得点1/2を持ち点として、今大会2日間の個人総合結果により順位を決める大会。
ポイントは何といっても、内村を除いたトップの選手1名が、世界選手権の代表になるという点でした。

1日目を終えての順位は

内村 航平181.825
加藤 凌平 177.875
野々村笙吾 176.750
田中 和仁 175.300
小林 研也 174.275
田中 佑典 174.200

加藤が一歩抜け出し、それに同じ順天堂大の野々村が続き、ベテランの田中和仁、小林という状況でした。

加藤は先日の学生選手権のウォーミングアップ中に、つり輪の皮ベルトが切れるというアクシデントにあい肩を痛めた影響で、かなり調子が悪そう。
得意のゆかでも、ラインオーバーがあったり、捻りの回転が足りずに窮屈な着地になったりしていました。

加藤を追う野々村は、床で少しミスがありましたが、その後はミスのない演技。

田中和仁は調子が良さそうで、最近よく落下していたあん馬でも、この日は完璧な実施。
全体的にいい流れで試合を進めているように見えました。

 

順天堂の2人の熾烈な2位争い

5種目目の平行棒を終えた時点で、2位争いは、ほぼ加藤と野々村の2人にしぼられ、

加藤 250.975
野々村 250.450

という得点で、点差は0.525。

最終種目鉄棒の、前日のそれぞれの得点は

加藤 14.750
野々村 15.350

と、野々村のほうが0.600よかったので、同じ内容ならば、野々村が逆転することになります。

さらに鉄棒は落下もありえるので、まさに目が離せない状況。

ここで、先に演技をした野々村は、前日より難度を上げた構成で着地をピタリと決めるほぼ完璧な演技!
この強心臓っぷりに、会場もどよめきました。

得点は前日と同じ15.350。

加藤には「前日と同じでは負ける」というプレッシャーがかなりかかったと思います。

ここで加藤は、前日少し乱れがあり、落下の危険性もある離れ技のコールマンを抜く演技構成に変更。
ミスなく演技をまとめ、15.100と前日よりも得点を伸ばし、ライバル対決に勝利しました。

 

明暗を分けた2人の表情

鉄棒の得点が出たところで、この日初めて加藤の表情が緩み、世界選手権代表を勝ち取ったことを確信しての力強いガッツポーズ。

それでも、笑顔を見せたのはその一瞬だけで、野々村のことを気遣ってか、そのあとはポーカーフェースでした。

敗れた野々村は、悔しそうな苦笑いを浮かべていました。

最終的な点差は、本当に少しのミスでひっくり返る、0.275というものでした

加藤 初の世界選手権代表、順大同期との争い制した ― スポニチ Sponichi Annex 体操.

死闘の先にあった0・275点差の明と暗。戦いを終えた19歳同士の表情は逆に見えた。勝った加藤は無表情を装い、敗れた野々村は笑顔。「競った相手がライバルの野々村で良かった」と言った加藤に、野々村は「これが実力」と潔かった。

野々村の潔い言葉は、故障を抱えた加藤が本調子ではないことは明らかだったので、それも含めてのものだと思います。

それでもやはり悔しかったのでしょう、試合後、順天堂大学のチームメイトたちが試合のプレッシャーから解放されて談笑する中、野々村は少し離れた位置に一人座り込んで、悔しさをかみしめているように見えました。

対する加藤も、インタビューなどを終えたあと、へたり込むように座り、そのあとしばらくぼーっとしていました。

年明けから試合に出続けていることによる疲労の蓄積と、アクシデントによる故障という状況のなか、ものすごくタフな試合だったのでしょう。

そんな中でも、最後まで気持ちを切らさず代表を勝ち取ったのは、順調に勝ち取るよりも、大きな経験になったのではないかと思います。

野々村は、残りの代表を決める種目別選手権の出場は見送るようなので、今年の世界選手権での競演はなさそうですが、今後この2人が日本の体操界を引っ張っていくことは間違いないでしょう。

 

貫禄の王者

内村は1種目目のゆかで、ほぼ着地を決め、本人もガッツポーズ。

その後の演技でも、少しずつ難度を落とした構成にしながらミスなく、すべての種目で15点台というもはや”ひとり旅”の状況でした。

今まではどんなに不調でも難度を落とすことに難色を示していた内村でしたが、優勝インタビューでも「楽に、無難に、美しく」という、今までとは少し違う発言をしていました。

これはロンドン五輪以降の大きなケガを経験したことと、2020に開催される可能性のある東京オリンピックまで続けたいという気持ちの現れでしょう。

しかし無難にやってすべて15点代というのは恐ろしい。

もはや化け物(笑)。
Gymnastics Monsterですね。

 

残る代表は6/29、30の種目別選手権で決まります。

こちらも注目していきたいと思います。

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