世界体操2011 男子予選:不調のエースと、影のMVP

男子の予選がついに始まりました。

今回の世界体操で33年ぶりの金メダルを目指す日本としては、決勝を休憩が多い有利なローテーションで回るために、1位をとることが優先最課題となっています。
最大のライバル中国は明日の演技なので、高得点を叩き出して、少しでもプレッシャーをかけたいところ。

しかし、世界大会の重圧なのか、開催国のチャンピオンとして広報活動をたくさんこなしたせいなのか、内村の表情に覇気がないように感じられて気になっていました。
そして案の定というか予想外のアクシデントがいくつも起きました。

まず跳馬で、内村が着地の際に前に手をつくミス。
内村の跳馬というと、足に重りでも入っているのではというぐらい”ドスン”と着地するのが当たり前になっているだけに、このミスは驚きでした。

本当にミスの少ない選手がミスをすると、ただのミス以上に意味を持ってしまうもので、この瞬間に不穏な空気を感じた人も少なくなかったはずです。

さらに、田中佑典が床の演技中に頭を打ち、脳震盪で演技続行が不可能になるアクシデント。
ここまで内村の得点を上回るほどの好調さを見せていて、個人総合の決勝も見据えていた矢先のアクシデントだっただけに、本人の落胆も大きいだろうと思います。

しかしこのアクシデントで、流れが変わりました。
直後の演技の内村の表情からは、田中の無念を感じ取り、それを晴らすとでもいうような”スイッチの入った”表情になっていました。

足の状態が思わしくなく、床のウォーミングアップ時には、「走るとつりそうな感覚しかなかった」ということで、アップを控えたというような状況の中での見事な演技。

そしてあん馬ではキャプテン小林の気迫のこもった演技に、内村もチーム最高得点をマーク。
結果、364.291で、1日目終了時点でトップに立ちました。

団体戦というのは、本当に”流れ”とか“ムード”といった、メンタルの要素が大きいので、こういう悪い流れを断ち切るということは、すごく重要なことです。

そういった意味では今日の影のMVPは沖口でしょう。
日本の得点源である跳馬でロペスを決め、田中佑典のアクシデントで急遽決まったあん馬でも安定した演技で、悪い流れを断ち切っていました。

まさかのアクシデントで個人総合の出場は逃しましたが、田中佑典の鉄棒は素晴らしかった。
しなやかかつダイナミックという、ほかにあまりない雰囲気の演技。

インタビューで語っていた、手放し技に行くまでの車輪の回数を少なくしているという”エコ体操”が、その独特の雰囲気の要因でしょう。
車輪の回数が少ないことで、技と技の間が短く、スピード感のある演技になっています。

おそらく種目別にも残ると思うので、ぜひメダルを狙ってほしいです。

内村は足を気にするそぶりを何度も見せ、いつもの演技ではなかったですが、それでもすべての種目で15店台を叩き出したのは、やはり恐るべしといったところ。

昨日の女子から今日の男子予選1日目を見て、体操という競技は、こういったこともアクシデントも起こりうる競技だということを改めて感じました。

一つのミスがその後の流れを大きく変えてしまうことの怖さ。
そして一人の演技によって、悪い流れが良い流れに変わるということもみることができました。

これが団体戦のだいご味ですね。

あすは中国が登場します。
ライバルの動向をしっかり見ていこうと思います。

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